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(ボイス)クラウド

ボイスクラウドとは、クラウド上に構築した音声認識によるIVR(Interactive Voice Response)コールセンター業務の生産性向上に役立てるシステムです。従来は顧客による番号プッシュに頼っていた情報入力を音声認識システムによって行うことで、IVRにさらに多くの処理を任せることができるようになります。音声認識のシステムはコールセンターにおける多くのオペレーションと親和性が高く、業務の大幅な効率化が期待できます。

顧客とコールセンター双方にメリットをもたらす

ボイスクラウドによって簡略化される処理は多岐にわたります。顧客特定に必要となる本人認証はその代表的な例です。従来のパスワードに代わる存在として顧客自身の声を設定すれば、個人情報を口頭で述べる必要がなくなります。「個人情報を電話口で言いたくない」という顧客への対応では、効果的なソリューションとなり得ます。CSが向上するだけではなく、セキュリティも強化されます。
ボイスクラウドのIVRを導入すれば、コールセンターは典型的なコールリーズンの処理をIVRに任せることができます。それにより、ワークフォースのリソース確保が容易になる等のメリットがあります。このような理由から、企業に最適なボイスクラウド型IVRを導入すれば、より効率的にコールセンターを運営できると言えます。

CTI連携(音声認識とCTI)

ボイスクラウドは音声認識の技術がベースとなっているシステムであり、IVRだけではなく他の技術との連携も期待されています。とりわけ、CTIは現在多くのコールセンターに導入されているテクノロジーであり、音声認識との親和性が高いと考えられている技術です。音声認識とCTIを組み合わせたシステムを活用すれば、オペレーターの業務はこれまで以上に効率化されます。
従来のCTIシステムでは、オペレーターの手入力による管理が必要でした。この行程が、オペレーションにおける工数の増加や、ヒューマンエラーの原因になることは少なくありません。顧客とのトラブルにつながることも多く、あらゆる産業のコールセンターにおいて、決め手となるソリューションが求められていました。
音声認識とCTIを組み合わせたシステムを活用すれば、顧客との対応内容からコールリーズンを割り出し、最適と思われるナレッジFAQを各オペレーターの業務用端末に表示できます。これは、オペレーター(とりわけ対応しながらのキーボード操作に慣れていない新人)をサポートしてくれる機能です。ベテランのオペレーターにとっても、工数削減や、ヒューマンエラーの防止につながります。
また、管理者のオペレーションでも、CTIと音声認識を組み合わせたシステムの利便性によるマネジメントの効率化が期待されています。効率化が考えられる代表的なオペレーションのひとつが、管理者によるモニタリングです。従来のCTIシステムによる通話音声ベースのモニタリングでは、一人の管理者につき一件の同時モニタリングが限界でした。そのため、対応時間を超過している入電の件数が管理者の数を上回った場合、指示を送るのが困難でした。
音声認識によるモニタリングでは複数の対応をテキスト化し、管理者の業務用端末画面に表示できます。このシステムにより、入電状況にかかわらず各オペレーターへと指示を送ることが可能となります。また、テキストログをさかのぼれるため、案件の状況把握も容易です。一人の管理者が管轄できるオペレーター数の増加、クレーム案件、処理時間超過案件への対応力向上が実現できます。

CTIとは、クラウドのメリット

CTI(Computer Telephony Integration System)とは、「電話とコンピュータの統合システム」を意味します。一般的には、かかって来た電話をコンピュータの管理システムと同期させ、顧客情報を検索・表示させるシステムとして認識されています。日々のオペレーションで無数の顧客と対応することになるコールセンターにおいては、欠かすことのできないシステムです。
CTIシステムには、同一顧客との過去の対応履歴も格納されています。対応履歴は、顧客との間で起こり得るトラブルを防止するために残されているものです。同時に、対応履歴をはじめとしたコールセンターが抱える顧客データは日々膨大になっていくため、自社にシステムを構えるオンプレミス型のCTIでは、サーバ管理の工数、コストなどが問題となっていました。
近年は外部のシステムを利用するクラウド型のCTIが普及しており、コールセンターをはじめとした電話でオペレーションを行う多くの業態で活用されています。日々、顧客情報が蓄積され続けるコールセンターでは、サーバ保守の手間やコストの問題を解決する新しいソリューションとして利用されるようになったシステムです。現在は多くの企業からクラウド型CTIのサービスが提供されており、カスタマイズ性に富んでいることからもさまざまな産業のコールセンターで活用されています。
また、クラウド型CTIは、従来のシステムで懸念されていた導入コストの問題もクリアしました。多くのクラウド型CTIは月額制で提供されており、大規模な初期費用や設備投資を軽減できます。このことから、比較的小規模な企業がローコストのクラウド型CTIを利用し、自社のコールセンターを構える動きが多く見られています。クラウド型のCTIにもボイスクラウド、音声認識のシステムは広く採用されており、多くの企業のコールセンターにとって身近な存在になってきています。

リアルタイムテキスト化

CTIにおける音声認識技術で最も活用され、今後の向上も期待されている機能が、「リアルタイムでのテキスト化」です。これは、システムに入力された音声を認識し、そのまま速やかにテキスト情報として出力する機能を意味します。なお、コールセンターのオペレーションにおいてリアルタイムテキスト化の対象となるのは、顧客とオペレーターの会話内容です。
オペレーションの中でもとりわけリアルタイムテキスト化のメリットが期待できるのが、対応履歴の記録です。従来の対応履歴記録は対応を担当したオペレーター自身の手入力によって行う必要があり、後処理時間の大部分を占めていました。後処理時間を縮めるため会話の最中に入力を行おうとすると、会話への意識がおろそかになってしまうという弊害があります。履歴として残すべき情報、記載方法などはオペレーターによって差異があり、複数回の入電で対応するオペレーターが変わった場合は情報の共有が困難になるケースがあることも問題でした。
リアルタイムテキスト化機能が追加されたシステムを利用すれば、対応内容は自動的にテキスト情報として出力されます。詳細に文字起こしされた情報は、音声データに次ぐ正確な記録である一方、サイズが非常に小さいため音声データよりもはるかに運用が容易です。オペレーターによる手入力を必要としない点もメリットと言えます。
また、リアルタイムテキスト化による恩恵は、対応履歴記録の効率化だけではありません。管理者によるテキストモニタリングや、QAによる対応品質維持の正確化にも活用が期待できます。記録のマーケティング活用など、コールセンターのオペレーション外でも活用が考えられているようです。
一方で、音声認識が極めて正確であることが前提の機能のため、さらなる認識率向上が求められています。現状は100%の認識率とは言えず、出力されたテキスト情報には人間による手直しが必要です。「電話」という音声が明瞭には認識できない環境への対応力も求められています。人工知能による予測、自己学習機能などを利用して、コールセンターでの実用レベルまで正確性が高められていく予定です。

VOCの収集・活用

「顧客の声」を意味する「VOC(Voice Of Customer)」の収集は、企業が成長するヒントを得るために奨励されています。顧客の生の声に触れ、「顧客のコンタクトリーズを解決する」というオペレーション上、企業の改善点に直面することが多いコールセンターでは、VOCの収集が業務のひとつとして数えられています。同時に、オペレーターに記録の手間を強いる点や、対応記録から有効なVOCを抽出する難しさから、効率化が必要な業務として考えられていました。
音声認識は、VOCの収集をこれまでより大幅に容易化する技術として注目されています。顧客との対応履歴を自動的にテキスト化し、記録できるのは上述したとおりです。VOCの記録は効率されるため、オペレーターの生産性を圧迫しません。また、貴重な顧客からの声を取りこぼすこともありません。
VOCがテキストで記録されてさえいれば、テキストマイニングによって効率的に抽出・検証できます。従来のVOCは抽出の手間、難しさから無駄になってしまう傾向がありましたが、音声認識とテキストマイニングのシナジーによって、これまで以上に有効活用されるようになると見られています。
一方で、上述したような音声認識の精度の問題が残されている他、膨大な量になるVOCを、どのように管理・分析していくかも課題です。VOC抽出の効果を最大化するためには、ビッグデータのコンセプトや、マーケティングの考え方も必要になるでしょう。
顧客が持つコールセンターの印象は、オペレーターの対応による影響を大きく受けます。同時に、オペレーターの会話トーン、言葉遣い、明るさは、どんなテクノロジーでも改善できない要素です。システムでいかにオペレーションを効率化し、サービスレベルを向上しても、オペレーターの対応品質が悪ければ顧客満足度(CS)は低下していまいます。
対応品質そのものはテクノロジーの影響を受けませんが、テクノロジーによる業務効率化は、対応品質を向上させるために必要な工数・コストのリソースを生みます。人間が行うべきオペレーションをシステムが担うようになれば、オペレーターは余計なことを考えず、「顧客への配慮」や「丁寧な対応」に注力できるようになります。
ボイスクラウドも、言わば「オペレーターを会話に集中させるための技術」です。音声認識IVR、リアルタイムテキスト化の機能により、オペレーターの負担は大幅に軽減されます。これによって生まれた余裕を利用すれば、上述したようなオペレーターしかできないタスクに意識を集中できます。また、「オペレーターが行うべきタスク」と、「システムが自動処理すべきタスク」のすみ分けを行うことにより、教育にコストと時間をかけられるようになるでしょう。
顧客対応の最善線に立つコールセンターにとって、オペレーターの意識を顧客との「会話」に集中させることは大きな意味を持ちます。コールセンターがボイスクラウドを導入することによって得られる最大の効果は、この「顧客満足度の向上効果」だと言えるでしょう。
上述したように、ボイスクラウド、そして音声認識によってコールセンターのオペレーションは極めて大きな影響を受けます。特に平均処理時間(AHT/Average Handling Time)の短縮や、サービスレベルの向上など、生産性への向上効果は極めて大きな影響です。これからのコールセンターにとってボイスクラウドは、生産性向上のカギとなる存在と見られています。
すでにボイスクラウドは多くのコールセンターで導入されており、実際に生産性を大きく向上させた例は少なくありません。上述したように現状の音声認識機能自体は完璧な精度ではありませんが、十分な業務効率化効果をコールセンターにもたらしています。VOC抽出の効率化は企業にとっての課題が浮き彫りになることから、生産性向上以上に大きな意味を持ちます。
同時に管理者に求められるのは、ボイスクラウドによる最適な業務効率化を行うことと、効率化によって生まれたリソースの余剰でオペレーターの対応品質を向上させ、さらなる顧客満足度の向上を狙うことです。ボイスクラウドによって変えられる要素と、変えられない要素をはっきりと認識して、コールセンターのマネジメントを行うことが重要です。

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